【圧縮性流体力学入門】亜音速・遷音速・超音速そして衝撃波【第2弾】

航空宇宙工学を専攻する東大院生が,圧縮性流体力学の要点・エッセンスをご紹介するシリーズの第2弾! 圧縮性流体力学を学び始めた学部生や社会人の方にとって,専門書はハードルが高い・・筆者がこれまで実際に学習した中でここは!という要点をギュッと詰めました.サクッと,でもきちんと学びたい方必見です.

今回は圧縮性流体力学入門の第二弾です!第一弾では,音速とマッハ数についてご説明しました.【圧縮性流体力学入門】音速とマッハ数【第1弾】

 

亜音速・遷音速・超音速そして衝撃波ということで,超音速ならではの現象を見ていきます.

亜音速流れと超音速流れ

亜音速流れでは,物体の移動に比べ,空気の波動の届く速度は大きいため,左の図のように各時刻の波動が交わることはないが,超音速の流れでは,右図のように,物体の移動に比べ,空気の波動の届く速度が小さく,別の時刻の波動同士が,重なり合う部分が生じます.それが,赤字で示したマッハコーンと呼ばれるもので,超音速流れに特有の現象になんですね.マッハコーンが進行方向となす角をマッハ角$\alpha$と呼び,マッハ数を用いて

$$\sin\alpha=\frac{1}{M}$$

と表すことができます.(速度と音速の簡単な幾何関係から求まります)

遷音速流れと衝撃波の発生

流れが音速付近となるときにどのような現象が生じるんでしょうか?今回は航空機の翼を考えてみます.

一番左の図は音速よりも十分小さいような速さでの流れ.特になにも起きません.

それがどんどんと速度が上がってくると,翼に沿う流れには一様流れにより速い部分と遅い部分が生じて,マッハ数が$M_{\infty}$より大きい部分と,小さい部分が生じます.さらに速度が上がると,左から2番目の図のように,$M_{\infty}$を1に近づけると,$M_{\infty}$が1に達する前に,流れ場の速度最大のところが,マッハ数1を迎えます.この状態を臨界状態,そのときの$M_{\infty}$を臨界マッハ数$M_{\infty cr}$と呼びます.$M_{\infty}$は$M_{\infty cr}$をわずかに超えると,表面近くの流れは超音速に加速されます.後縁で生じた微小擾乱は$M_{\infty}<M_{\infty cr}$のときは,十分上流まで伝わりますが,$M_{\infty}=M_{\infty cr}$の場合,流れ場の速度最大の箇所で流速と音速が等しくなるため,微小擾乱はその点にとどまることになります.$M_{\infty}>M_{\infty cr}$の場合は,無限に多くの擾乱が集積されて,これが衝撃波となっていきます.$M_{\infty}>1$になると,翼面から生じ上流へ伝わる擾乱が前方に別の衝撃波を形成し始めます.さらに速度が上がっていくと,翼を囲うように衝撃波が形成されていきます.下図のはやぶさカプセル再突入時のイメージ画像ともマッチしていますね.

 

このように,音速に近づき,音速を超えると,通常の流体力学では説明できなかったような現象「衝撃波」が生じます.

今回はここまでです!

次回は一次元流れの基礎式についてまとめていきます.

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました