航空宇宙工学を専攻する東大院生が,流体力学の要点・エッセンスをご紹介するシリーズの第5弾! 流体力学を学び始めた学部生や社会人の方にとって,専門書はハードルが高い・・学問では,まず概観をしっかりつかんでおくのが重要だと思っています.筆者がこれまで実際に学習した中でここは!という要点をギュッと詰めました.
今回は,連続の式です.
第4弾は,こちら
連続の式とは,流体が連続的に流れる条件を表していて,すなわち流れが可能かどうかということでもあります.
図の検査体積ABCD内に微小時間$\Delta t$に流入する流体の質量は,
$$\rho u \Delta t\Delta y+\rho v \Delta t\Delta x$$
$$= \left(\rho u\Delta y+\rho v \Delta x\right)\Delta t$$
流出するのは,x方向については,
$$\left(\rho + \frac{\partial \rho}{\partial x}\Delta x\right)\times\left( u + \frac{\partial u}{\partial x}\Delta x\right)\Delta y\Delta t$$
$$=\left[\rho u + \left(\rho \frac{\partial u}{\partial x}+u\frac{\partial \rho}{\partial x}\right)+o(\Delta x^2)\right]\Delta y\Delta t$$
したがって,$\Delta x$が微小なら
$$=\left(\rho u + \frac{\partial (\rho u)}{\partial x}\right)\Delta y\Delta t$$
とできて,y方向も同様に
$$=\left(\rho v + \frac{\partial (\rho v)}{\partial y}\right)\Delta x\Delta t$$
とかける.
また,密度変化による質量変化は,
$$\rho\Delta x\Delta y+\frac{\partial \rho\Delta x\Delta y}{\partial t}\Delta t – \rho\Delta x\Delta y = \frac{\rho}{\partial t}\Delta x\Delta y\Delta t $$
よって,これらのつりあいを考えて,
$$-\left[\frac{\partial (\rho u)}{\partial x}+\frac{\partial (\rho v)}{\partial y}\right]\Delta x\Delta y\Delta t =\frac{\partial\rho}{\partial t}\Delta x\Delta y\Delta t $$
つまり,
$$\frac{\partial (\rho u)}{\partial x}+\frac{\partial (\rho v)}{\partial y}+\frac{\partial\rho}{\partial t}=0$$
を得ます.これこそが,連続の式で,流れている流体はつねにこの条件を満たします.
連続の式はいわば質量保存則です.式そのものを覚えていることも重要ですが,導出から本質を感じていただくことがより重要です.その意味で,これが完全流体ではなく圧縮性流体(こちらも入門シリーズがありますので興味のある方はチェックしてみてください. 【圧縮性流体力学入門】音速とマッハ数【第1弾】
)を対象としていても適用できる(一般性を失っていない)表式だとお分かりいただけると思います.
通常の流体力学では,密度変化を考えることはないため,密度は時間・位置に依存せず,
$$\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial v}{\partial y}=0$$
と書き直せることがわかります.こちらの方が,馴染み深い書き方ですね.
今回はここまでです.次回は,流れ関数のお話です!
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