【流体力学入門】流体粒子の加速度と実質微分【第2弾】 | デイビッドの宇宙開発ブログ

【流体力学入門】流体粒子の加速度と実質微分【第2弾】

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この記事は,大学教養の微分積分学における「偏微分」,「全微分」,「テイラー展開」の知識がある方を前提にしています.

実質微分

基礎方程式を導出する前に,流体力学特有で,基礎的な概念である「実質微分」について説明します.

普通の微分というと時間$t$ 的に変化する関数$f(t)=t^2$なんかに対して$t$で微分して,$f'(t)=2t$でしょ!みたいなことですよね.

高校の力学なんかでやるようなシンプルな運動を考える場合は,時間にだけ依存して変化するような速度や加速度なんかを考えているんですが,

流体は無数の微小な流体の塊から成り立っていると考えます.この微小な流体の塊を流体粒子と呼びます.

流体で考える粒子では,粒子がどこにいるのか,すなわち位置によっても変化すると考えます.なので,流体の粒子で考えるべき「速度」は時間だけでなく,位置にもよる関数になります.そのことが速度を微分して加速度を計算する際に影響します.このあたり大学教養の微積分で学ぶ,偏微分や全微分の考え方が必要ですが,読者にはその知識はあるものとしてここではすすめます.不安な方はそちらを学習してからまた戻ってきてください!すみません!

ヨビノリ大先生に丸投げしとこう.

偏微分(https://www.youtube.com/watch?v=UWFTIEIruyc

全微分(https://www.youtube.com/watch?v=ChoArVJnSjQ

 

つまり,

$$\begin{eqnarray*}u=u(t, x, y, z),\ \ \ v=v(t, x, y, z)\end{eqnarray*}$$

とかけます.

流体粒子の加速度

これから,流体の力学的な運動方程式を考えていくわけですが,そうなると,流体粒子の加速度を考える必要があります.当然,そのためには,流体の速度の時間的な変化量を計算(微分)しなくてはなりません.

時刻$t$において,流体粒子がある位置$P(x, y)$が,微小な時間$\Delta t$が経った,時刻$t+\Delta t$では,  $P(x+\Delta x, y+\Delta y)$の位置まで移動しているとします.

そうすると,速度の変化は,

$$\begin{eqnarray*}u+\Delta u&=&u(t+\Delta t, x+\Delta x, y+\Delta y, z+\Delta z)\\ v+\Delta v&=&v(t+\Delta t, x+\Delta x, y+\Delta y, z+\Delta z)\end{eqnarray*}$$

とかけます.よって,

$$\begin{eqnarray*}\Delta u&=&u(t+\Delta t, x+\Delta x, y+\Delta y, z+\Delta z)\\&&-u(t, x, y, z)\\
\Delta v&=&v(t+\Delta t, x+\Delta x, y+\Delta y, z+\Delta z)\\&&-v(t, x, y, z)\\
\Delta w&=&w(t+\Delta t, x+\Delta x, y+\Delta y, z+\Delta z)\\&&-w(t, x, y, z)\end{eqnarray*}$$

ここで,それぞれ右辺の第一項をテイラー展開し,二次以上の高次項を省略すると,

$$\begin{eqnarray*}\Delta u&=&u(t, x, y, z) \\&&+\frac{\partial u}{\partial t}\Delta t+ \frac{\partial u}{\partial x}\Delta x+ \frac{\partial u}{\partial y}\Delta y+ \frac{\partial u}{\partial z}\Delta z \\&&-u(t, x, y, z)\\
&=&\frac{\partial u}{\partial t}\Delta t+\frac{\partial u}{\partial x}\Delta x+ \frac{\partial u}{\partial y}\Delta y+ \frac{\partial u}{\partial z}\Delta z\\
\Delta v&=&v(t, x, y, z) \\&&+\frac{\partial v}{\partial t}\Delta t+ \frac{\partial v}{\partial x}\Delta x+ \frac{\partial v}{\partial y}\Delta y+ \frac{\partial v}{\partial z}\Delta z\\&& -v(t, x, y, z)\\
&=&\frac{\partial v}{\partial t}\Delta t+\frac{\partial v}{\partial x}\Delta x+ \frac{\partial v}{\partial y}\Delta y+ \frac{\partial v}{\partial z}\Delta z\\
\Delta w&=&w(t, x, y, z)\\&& +\frac{\partial w}{\partial t}\Delta t+ \frac{\partial w}{\partial x}\Delta x+ \frac{\partial w}{\partial y}\Delta y+ \frac{\partial w}{\partial z}\Delta z \\&&-w(t, x, y, z)\\
&=&\frac{\partial u}{\partial t}\Delta t+\frac{\partial v}{\partial x}\Delta x+ \frac{\partial v}{\partial y}\Delta y+ \frac{\partial v}{\partial z}\Delta z\end{eqnarray*}$$

と計算できる.さらに,微小な時間の$\Delta t$の間で,生じる移動距離は,変化前の速度$u,v$を用いて,

$$\begin{eqnarray*}\Delta x=u\Delta t, \ \ \Delta y=v\Delta t\end{eqnarray*}$$

とかけます.微小時間中なので,速度変化はないと考えます.

よって,

$$\begin{eqnarray*}\Delta u&=&\frac{\partial u}{\partial t}\Delta t+\frac{\partial u}{\partial x}u\Delta t+ \frac{\partial u}{\partial y}v\Delta t+ \frac{\partial u}{\partial z}w\Delta t\\
\Delta v&=&\frac{\partial v}{\partial t}\Delta t+\frac{\partial v}{\partial x}u\Delta t+ \frac{\partial v}{\partial y}v\Delta t+ \frac{\partial v}{\partial z}w\Delta t\\
\Delta w&=&\frac{\partial w}{\partial t}\Delta t+\frac{\partial w}{\partial x}u\Delta t+ \frac{\partial w}{\partial y}v\Delta t+ \frac{\partial w}{\partial z}w\Delta t\end{eqnarray*}$$

となります.加速度を考えたいので,時間での微分を考えて,

$$\begin{eqnarray*}a_x &=&\lim_{\Delta t\rightarrow 0} \frac{\Delta u}{\Delta t}\\&=&\frac{\partial u}{\partial t}+\frac{\partial u}{\partial x}u+ \frac{\partial u}{\partial y}v+ \frac{\partial u}{\partial z}w \\&=& \left(\frac{\partial }{\partial t}+u\frac{\partial }{\partial x}+v\frac{\partial }{\partial y}+w\frac{\partial }{\partial z}\right)u\end{eqnarray*}$$

となります.y方向とz方向も同様です.ここで,最終式のカッコでくくった部分を,

$$\begin{eqnarray*}\frac{D}{Dt} = \left(\frac{\partial }{\partial t}+u\frac{\partial }{\partial x}+v\frac{\partial }{\partial y}+w\frac{\partial }{\partial z}\right)\end{eqnarray*}$$

と書いて,実質微分と呼んでいます.

今回は,流体粒子における時間微分は,通常の時間微分ではなく,上式で表される実質微分となることを確認しました.

 

追記

流体の運動を記述するのには,大きく二つの方法があります.

ひとつめが,ラグランジュの方法,ふたつめがオイラーの方法です.

ラグランジュの方法は,各流体粒子が時間経過でどのように動くか追跡するもので,1つの粒子の経路,加速度を知るのに便利です.

オイラーの方法は,流れ場全体の様子をそれぞれの時刻に一度調べるような方法です.流速,圧力などを座標,時間の関数で表します.

次回は,この実質微分を頭にいれて,基礎方程式を導出します!

【流体力学入門】非粘性流体の運動方程式の導出【第3弾】

 

 

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