【高校生必見】航空宇宙工学科の実際!!【経験談・内部事情】

どうもこんにちは!デイビッドです.

今回は少し,いつもと毛色が変わります.というのも!

航空宇宙に興味を持っている高校生(や中学生)のために,航空宇宙工学科の実際をお伝えします!!

航空宇宙工学科って具体的には何やるの?

実際どんな感じ?面白いの?雰囲気は?おすすめは?

などなど,様々な疑問があると思います.

航空宇宙工学を学びたい高校生だった私が,学部で航空宇宙工学科に進み,その航空宇宙工学科から院で東大の航空宇宙工学科に進学した実体験も交えながら,思いつくままにお話しします.

それでは,レッツゴー!

そもそもの注意点

そもそも航空宇宙工学科というのは航空学科が源流ですから,飛行機に関連する話はどこの大学でも学ぶと思います.

今でこそ,JAXAの「はやぶさ」や今話題の「はやぶさ2」,民間でも宇宙ベンチャーの湧出など徐々に盛り上がりを見せていますが,日本では宇宙工学が盛んとは言えないので,航空宇宙工学科といえども,宇宙関連の話題をきちんと学べるところは少ないです.

もしあなたが宇宙工学を日本で学んで,宇宙に関わる仕事をしたいのであれば,宇宙開発実績のある研究室に狙いをつけるのがおすすめかなと思います.研究室のオススメは,次回以降していければと思います!

どんな学生がくる?

完全に主観ですが,航空宇宙工学科に来る学生の多くは飛行機か宇宙機(衛星かロケット)に興味があると言い切ってしまっても大丈夫でしょう.実際は,やりたいことは特にないが成績優秀なので,人気で倍率の高い航空宇宙工学科にきてみた,みたいな人が一定数いるのが現実です.意外とオタク度(航空宇宙への興味関心度)に差がありますね.

中には管制官になりたい!やパイロットになりたい!宇宙飛行士になりたい!という思いで入った人もいるかもしれません.ですが,工学科ですので,良くも悪くもエンジニアになりたい方向けです.当然ものづくりの立場から学ぶので,上記のような職に憧れる人が,「あれ少し違うかも」と感じることは大いにあり得ます.私は幼い頃からエンジニアになりたかったので,迷わず選びました.そんな私でも,学部の頃は,「こんなことがやりたかったのかな?」と思い悩んだ時期があります.その辺はまた機会があれば話そうかと思います.

ちなみに宇宙飛行士になりたい場合は必ずしも航空宇宙工学科を出る必要はありません.

「自然科学系の大学院の修士の学位を持っていること」が条件だったと思います.もちろん,航空宇宙工学科から宇宙飛行士になっている方は多いです!

宇宙物理学と宇宙工学の違い

また,「宇宙」という言葉に惹かれて,選ぶ人も多いですが,

「宇宙物理学」がしたいのか「宇宙工学」がしたいのかで,ものすごく違うので注意してください.宇宙物理学というのは,星そのものや,宇宙空間の物質や放射線宇宙論を研究するもので,こういった分野は理学部の物理学科になります.ガチの天才が集まるイメージですね.対して,宇宙工学というのは,宇宙を開発するための工学全般を指しています.理学分野が,例えば, ある星の岩石の成分が知りたい,と工学分野に求め, 工学分野がその情報を獲得するためのマシン=探査機を開発する,というふうな流れでプロジェクトが進められていたりします.もちろん,単に工学技術の実証のために探査機や衛星を作ることもあります.

学ぶ内容について

数学

さて,学ぶ内容についてです.工学科ですので,微分積分,行列,微分方程式等が付いて回ります.航空宇宙工学科の学生は,高校の数学も得意だった人が大半だと思いますが,大学に入ってから,休憩をしすぎてしまって,大学の数学が身についていかない人は多いです.(どこの学部でもあることですが)

高校数学全般を得意にしておくのが理想で,特に数Ⅲをしっかり理解しておくことは大学に入ってからもとても役に立ちます(これは実体験です.大学の数学,特に1年生で学ぶような微積分学を苦労なく理解できます.その後,専門分野で行われる数学的な展開にも楽についていけます.高校で頑張ってよかったなと大学時代痛感しました.)

専門科目

機械学科で学ぶような学問の,特に,「航空機や宇宙機への応用」について学ぶのが航空宇宙工学科です.まず、高校の物理学で学ぶような力学を基礎学力として,大学で学ぶ少し「数学感の増した力学」を身につけたのち,

流体力学,固体力学(材料力学),熱力学,制御工学

などを中心に学びます.この辺りはいわゆる理論のお勉強で,これに加えて,工学分野では必須なプログラミングの授業もあります.

大学によっては,電子回路などの電気系の授業もありますが,私の学部時代の大学ではありませんでした.なお,東大ではあるようです.(注: 自学科になくとも,電気電子系の学科には当然ありますので,モチベーションと意識の高ささえあれば,制度的に授業を受けることは可能です.)

もう少し詳しくみていくと,

流体力学というのは,水や空気などが物理的に,巨視的に(分子よりは十分大きいサイズ)どのように振る舞うか学ぶものです.歴史は古いですが,航空学科の立場からは,飛行機の,主に翼の周りの気体の流れの挙動から働く圧力すなわち揚力や抗力などを計算したいというモチベーションがあります.それらが計算できれば,例えばどのような形の翼にすれば上手く飛行できるのかなどが分かるからです.数学的に綺麗に定式化されている話が多いのが一つ特徴です.また,航空学科が他の機械系学科と違うのは,「非常に速い流れ」について扱うことです.「高速流体力学」や「圧縮性流体力学」と呼ばれます.

次に、固体力学。固体力学は,流体力学と対になっているようなイメージを私は勝手に持っています.大雑把にいえば,固体でないものは流体で,流体というのはゆっくり変化させれば力なしで簡単に形が変わるもののこと.固体はその逆.実際その二つの違いは,その断面に平行な方向の力(せん断応力)が働くかどうかで決められている模様.つまるところ,せん断応力があるのが固体,ないのが流体というわけです.

力学的に両者の性質は異なるので,分野が分かれているということですね.(根底にある”力学”の考え方=ニュートンの力学法則を使用するのはどれも同じです.)

で,前置きが長くなりましたが,固体力学とは,固体にかかる内力や変形について考える学問です.これは土木建築の分野から生じたものです.いつの時代も人間は「住むための、より良い構造物を作りたい」わけですね.航空宇宙工学科では,作る対象である飛行機やロケット,衛星の構造をより良いものにしたいというモチベーションがあります.

制御工学は,近年の機械の高度化および電化,デジタル化の流れから急速に発展してきたものです.

衛星であれば,姿勢が適切でなければ,太陽光による発電も上手くできませんし,何かをセンサで観測することもできません.そういう意味で,姿勢を所望の向きに維持したり,精度よく変更したりということが常に求められます.また,衛星や探査機は,地球や太陽など星の重力を受けて運動しています.このように大きな目でみたとき,衛星や探査機を質点とみなせる場合の運動を軌道運動と呼んでいて,この軌道(=位置)も上手く操作したいという要求が宇宙機にはあります.衛星のように直接リアルタイムで人間が操作できないような対象の場合は特に問題で,衛星自身に備えられた制御の論理・アルゴリズムによってこれらの位置、姿勢の操作を達成しています.いわば自動化の技術で,そういった自動化のための論理・アルゴリズムを学ぶのが制御工学です.

そして,高校の物理でもそのままの名前で学ぶことが多いのでご存知の方も多い熱力学.飛行機のエンジンの熱サイクル・熱効率の改善に必要な知識ですし,圧縮性流体は熱力学的要素を考慮する必要が出てくるので,高速の流体力学には熱力学の話も大いに含まれます.また,宇宙機では,衛星内部の機器のために温度を適切に保つ必要があって,熱の問題が生じる(宇宙空間は典型的には4K=-269℃とかなり低温.太陽が当たれば急激に温度が上昇するなど極限環境なわけです)ので,それらについて研究の必要が出てくるわけです.

メインとしては以上のようなことを学びます.

大学の制度のお話

また,近年は,入ってから専門分野を選択していくコース分け制度をとっている大学も多いのです.航空宇宙工学科は一般的には人気が高いので,コース分けに成績が用いられる場合は,入学してからの1,2年はしっかり勉強する必要があります.

その分,大学受験の段階では,入り口が広くなっているとも捉えられますから,自由な時間が増える大学に入ってからしっかり取り組むというのも一つの手です!

最後に

航空宇宙工学科に入りたいという人向けに書いていますが,個人的には,大学に入ってからいくらでもやりたいことは変わると思っていますし,当然変わってもいいと思います.

「常に自分が何をやるのが楽しいのか,どうなりたいのか考える」のが大切だと思います.もちろん結論はすぐには出ませんしそれは苦しい時間です.それでも考え続けること.それから,今やらなければいけないこと,やり遂げたことは必ずどこかで役に立つということ.というよりむしろ苦労してやり遂げたんだから役立ててやる!と思うこと.そういう心持ちでいることが自分が納得できる道を進む上で大切なんじゃないかなあと思います.(偉そうに書きましたが,全部自分への忠告でもあります笑)

なんであれ,みなさんを応援しています.頑張ってください!!

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