なるほどそうか!宇宙初心者のための宇宙工学入門 第3弾 ロケットの原理

宇宙初心者のための宇宙工学入門 第3弾の今回は,ロケットの原理について簡単にご紹介します!!

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(HⅡ-Bロケット3号機,JAXA/三菱重工

前回のお話で,飛行機が飛ぶ原理について説明しました.

飛行機は空気の力を借りて飛んでいるということでした.

では,ロケットはどうなんでしょうか?

ロケットの打ち上げのシーンはテレビなどで見たことがある人も多いでしょう.

全体は円柱状で,先端はコーンのような形,そして下側にはロケットエンジンがついています.

発射直後,印象的なのは,

ブオオオオオオオオ

とものすごい勢いで炎?煙?のようなものが

出ていることですよね.

この

ブオオオオオオオオ

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ロケットが飛ぶ原理

隠れています!

ロケットエンジンでは,燃焼室の中で推進薬を燃焼させることで高温高圧のガスを作り,特徴的なノズルを通して,高速で後方にガスを噴射しています.このガスがミソなんです!

ロケットが推進する原理は,運動量保存則で説明されます.

いや待ってくれよ俺私物理よくわかんねえよ.そんな方!

よくこんな話聞きませんか?

ボートに乗ってて,

オール落とした!困った!ってときに,たまたまボートにおもりがいくつか載ってて,頑張ってそのおもりを進行方向と逆向きにオリャ!オリャ!って投げたらボートがグイーンと進んでよかったね〜〜

ってやつ.

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(ボートのお話)

あれとおんなじことを連続的にやってるのがロケットです(雑っ)

言ってしまえば,これがロケットの原理の説明です.実はすごく簡単!

ここで終わってしまっても面白くないので,もうちょっと詳しくみていきましょう!

運動量保存則というのは,

ある系(力を考える際のあるひとつのくくり・グループ)に外力が加わっていないなら,運動量(運動の勢いのようなものを表します)の和は常に保存されるぜー

という法則のことです.

運動量というのは,

質量[kg]×速度[m/s]

のこと(速度という言葉には,大きさと方向の両方の意味があります.すなわち運動量にも方向があります.)で,

お相撲さんがボルトさんくらいのスピードでこっちにむかってきたらやばいよねっていう指標です.

先程の例でいえば,ボートとボートに乗ってる人,ボートに載ってるおもりを全部ひっくるめてひとつの「系」と考えることができて,

「おもりの載っていない,人を含むボートの運動量」と

「投げたおもりの運動量」

の和は,

「おもりを投げる前の,人とおもりを含むボートの運動量」

に等しいですよーって言えるわけです.

さてロケットの場合はどうでしょうか.(本来は空気による力や重力などの外力が考えられますが,簡単のため働かないものとして考えましょう)

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ある一定の小さな時間\Delta tの間にのガス(燃料)\Delta mを進行方向後ろ側に噴射した場合を考えてみると,

「噴射したガス(燃料)分の質量が減ったロケットの運動量」と

「噴射したガスの運動量」

の和は,

「噴射を行う前の,燃料を持ったままのロケットの運動量」

に等しいですよーとなります.

\Delta m

ロケットが噴射を行う前の全体の質量をm, ロケットの増速\Delta vを, ガスがロケットの進行方向と反対向きに速度cで噴射されたとすると

(注:せっかく速度と言ってるのにだけわざわざ進行方向と反対側を正として定義するのは,「噴射速度の大きさ」というものがロケットの中で重要な指標だからです.それを噴射とは反対の方向を正として定義するといちいちマイナスをつけないといけないので,ロケットから噴射されることに重きを置いて, だけ向きが逆で定められています.)

「噴射したガス(燃料)分の質量が減ったロケットの運動量」は,

    \begin{eqnarray*}\left(m-\Delta m\right)\left(v+\Delta v\right)\end{eqnarray*}

「噴射したガスの運動量」は,

    \begin{eqnarray*}\Delta m\left(v-c\right)\end{eqnarray*}

(注:cはロケットから見た速度なので,地上からみると,ロケット自身の速度も考慮して,となります.ガスももともとロケットの一部ですから,ロケットの速度で動いていますよね?そこからロケットの進む方向と逆向きに噴射するので,地上から見れば,噴射速度分ロケットより遅くなるのでとなるわけです.)

「ガスを噴射する前のロケットの運動量」は

    \begin{eqnarray*}mv\end{eqnarray*}

となって

上2つの和が最後の運動量に等しいので

    \begin{eqnarray*}mv=\left(m-\Delta m\right)\left(v+\Delta v\right)+\Delta m\left(v-c\right)\end{eqnarray*}

という式が得られます!

この式をちょーいと計算してみます.

ここからの近似のお話は数学アレルギー物理学アレルギーの人は読み飛ばしてください笑

このとき,数学ではやらないですが,

物理学では,微小なものの掛け算は無視する=近似するという操作をしばしば行います.

これは実際の現象を表現するのに大きな差を与えないからです.

例えば,おじさん1人が歩いていたとして,その速度を問題にしましょう.ありんこ一匹がどれだけ本気を出してぶつかってきてもおじさんの歩く速度にほとんど影響を与えず,その影響はもはやゼロだと考えても差し支えないですよね?つまり,ありんこがぶつかってきても,人間に比べれば十分に小さく,その衝突による影響は無視できるわけです.

これと似たような考え方を今回の式にも適用します.

そして,なぜ微小量の掛け算の項が無視できるかということですが,

例えば,仮に

mが100,vは10だったとしましょう.\Delta mはに比べて微小なので,0.1くらい, \Delta vも同じように考えててきとーに0.01程度だと考えましょう.

ここで,mv\Delta m\Delta vの大きさを比較してみましょう.

    \begin{eqnarray*}mv = 100 \times 10\end{eqnarray*}

    \begin{eqnarray*}\Delta m\Delta v=0.1 \times 0.01=0.001 \end{eqnarray*}

いかがでしょうか?上の項は微小項の100万倍です.

上の項が1であるとすれば,微小項は0.000001ということです.

こんなもんあろうがなかろうが大きく変わらないですよね?

ただ,注意点があって,微小項とそうでない項の掛け算数の場合は微小項同士の場合に比べてそこそこ大きくなるので,無視はしません.

微小項同士の掛け算は無視することが多いです.

基本の考え方はお分かり頂けましたでしょうか?

かなり脱線してしまいましたが,

そういう次第なので,微小項の掛け算を無視すると

    \begin{eqnarray*}m\Delta v = \Delta m c\end{eqnarray*}

となります.

これを\Delta tで両辺割って

    \begin{eqnarray*}m\frac{\Delta v}{\Delta t} = c\frac{\Delta m}{\Delta t}\end{eqnarray*}

ここで,\Delta tを限りなく0に近づける操作を行います.このとき,は時間が進むにつれて減少するので,関数の傾きは負の値となることが分かります.ところがは大きさを表しているので,となります!数学的な話が多くてすみません・・・

結果としては,

    \begin{eqnarray*}m\frac{ dv}{dt} = c\frac{ dm}{dt}\end{eqnarray*}

となり,この式を時間積分することで,

    \begin{eqnarray*}v(t)= c\ ln\frac{m_0}{m(t)}\end{eqnarray*}

という式を得ます.m_0は,ロケットの初期質量です.lnというのはlog_eのことです.

この式はツィオルコフスキーの式『ロケット方程式』と呼ばれています!

数式の導出よりも,

この式の意味するところが重要です.

この式は,

ロケットの速度は

ロケットの初期質量と燃料を消費したあとの質量の比

に依存することを示しています.

具体的には,燃料消費後の質量が小さいほどよいので

ロケット打ち上げ前の全体の質量のうち,

ロケットの構造の質量よりも燃料の質量の割合を大きくすることが,大きな速度を得るのに重要だということを示しているのです.

実際のロケットも燃料の割合がかなり大きくなっています!

長くなってしまいましたが以上ロケットの基本中の基本,ツィオルコフスキーの式をはじめとするロケットの原理についてご紹介しました!

この式を知ったそこのアナタ!もうかなり宇宙通ですよ〜〜!!

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